大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)96号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由について)

二 第一引用例ないし第四引用例がいずれも本願出願前国内に頒布された刊行物であること、右各引用例にそれぞれ審決認定のとおりの記載があること、本願発明におけるベースガソリンがその組成成分およびリサーチオクタン数クリアーの点で本願出願前公知のものであつたこと、第二引用例ないし第四引用例を総合すると、アンチノック剤として、トリメチル・エチル鉛、ジメチル・ジエチル鉛、メチル・トリエチル鉛およびこれらの混合物を、本願発明における使用量の範囲内でガソリンに添加使用することが従前公知であつたこと、以上の事実はいずれも認めて争わないところである。

そして、原告は、右アンチノック剤の組成に関し、第二引用例ないし第四引用例には、本願発明のように、メチル基を二五パーセントないし七五パーセントとし、残部をエチル基とすることを示唆するものがない旨主張するが、アンチノック剤としてトリメチル・エチル鉛、ジメチル・ジエチル鉛、メチル・トリエチル鉛およびこれらの混合物をガソリンに添加することが公知である以上、そのメチル基とエチル基との割合をどのように定めることが最も有効であるかを見出すことは、煩をいとわずに実験の努力を重ねることを必要とするのみであつて、当業者にとつては、比較的容易なことといわざるをえない。

ところで、原告は、本願発明が、特定成分のベースガソリンに、メチル基とエチル基とが特定割合のアルキル鉛を特定量加えることにより、従前公知のアンチノック剤である四エチル鉛を用いる場合に比べて、オクタン数の向上の点で特段の作用効果を奏するものである旨主張するが、これを認めるに足る証拠がない。すなわち、<書証>によると、本願発明における特定成分の範囲内にあるベースガソリン五例を選択し、これにメチル基を二五パーセントないし七五パーセント含有したアルキル鉛を添加すると、四エチル鉛を添加した場合に比し、オクタン数が0.1ないし1.1の範囲内で平均0.5向上した場合のあつたことを認めることはできるけれども(同号証の二の実験例B)、他方、本願発明におけると組成を異にし、かつリサーチオクタン数クリアーの低いベースガソリンを用いた場合でも、四エチル鉛を添加した場合に比べて、同量のメチル基を含有したアルキル鉛を添加したときに、やはりオクタン数の向上(0.1ないし0.7)を見た場合もあること(実験例A)、本願発明のベースガソリンと組成範囲の条件を異にするガソリンを使用した実験例においても、そのリサーチオクタン数の向上は、本願発明のベースガソリンを用いた場合と比較して、なんら遜色のない場合もあつたこと(実験例5)を認めることができ、その他、<書証>記載の実験例を総合検討しても、組成成分およびリサーチオクタン数クリアーの点において本願発明の包含すべきベースガソリンのすべての場合を通じて、アンチノック剤として従前慣用の四エチル鉛を用いた場合に比し、オクタン数が特段に向上するものと認めるには必ずしも十分でないといわざるをえない。むしろ、メチル基を含有するアルキル鉛がアンチノック剤として良好であることが公知であり、また、用いるべきベースガソリンも公知のものである以上、右甲第一〇号証の一ないし五の実験例に示される程度のオクタン価の向上は、当然予測される範囲の効果にすぎないものというべきであろう。したがつて、<書証>をもつてしては、本願発明が、従前のものに比し、質的に異なるほどの特段の作用効果を奏するものとは認めることができず、他にこれを認めるべき証拠は、本件に現われていない。本件審決が、本願発明の右特段の作用効果を看過誤認した旨の原告の主張は、理由がないといわざるをえない。

(むすび)

三 以上のとおりであるから、その主張の点において判断を誤つた違法ありとし、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由のないことが明らかである。よつて、これを棄却する。

(服部高顕 石沢健 滝川叡一)

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